2024.1.18
2024年1月15日、鹿児島地方裁判所民事第2部(坂庭正将裁判長)は、鹿児島県内の生活保護利用者30名が鹿児島市、出水市、国を被告として提起した裁判で、保護費の減額処分の取消しを命じる原告勝訴判決を言い渡しました。
これまでに言い渡された26の判決(うち2つは高裁判決)のうち、2021年2月22日の大阪地裁判決、2022年5月25日の熊本地裁判決、同年6月24日の東京地裁判決、同年10月19日の横浜地裁判決、2023年2月10日の宮崎地裁判決、同年3月24日の青森地裁判決、和歌山地裁判決、同年3月29日のさいたま地裁判決、同年4月11日の奈良地裁判決、同年5月26日の千葉地裁判決、同年5月30日の静岡地裁判決、同年10月2日の広島地裁判決、そして同年11月30日の名古屋高裁判決に次ぐ、地裁では13例目、高裁を含むと14例目の勝訴判決となります
昨年4月14日の大阪高裁で逆転敗訴判決が出たものの、千葉地裁、静岡地裁、広島地裁に続き、名古屋高裁で勝訴。その後、那覇地裁では敗訴したもの、鹿児島地裁でも原告勝訴判決が言い渡されました。
これで地裁では、13勝11敗。一昨年5月の熊本地裁判決からは高裁も含めて13勝4敗と、厚生労働大臣の処分の違法性を認める流れには揺るぎがありません。
本判決は、物価動向を踏まえた減額(デフレ調整)を、リーマン・ショックが起きた2008年を起点したことについて、この年の生活扶助基準が妥当な水準にあったことの専門技術的考察が明らかとはいえず、また、厚労省が用いた独自の物価指数は、一般世帯を対象とした家計調査を元に算出しており、生活保護受給世帯の消費構造を反映していないと指摘。「統計等の客観的な数値等との合理的な関連性を欠く」として、厚生労働大臣の判断過程には過誤があり違法としました。他方、精神的損害の賠償については、引き下げの決定の「取消しにより回復される」として退けました。
判決後に開いた記者会見で、弁護団長の増田博弁護士は、「合理的で説得力のある判決だ」と評価するとともに、早期の解決を求めました。
また、原告の男性(73歳)は喜びの声を上げると同時に、生活の大変さを訴えて「国が保護基準を上げる後押しになってくれると良い」と語りました。さらに、支援者も「たたかわなければと思っただけで、提訴した頃は勝てるとは思っていなかった。全国のたたかいが流れを作ってくれた。勝てて嬉しい」と語りました。
これからは、残る6地裁、さらには続々と高裁判決が続きます。また、既に大阪訴訟、愛知訴訟が最高裁でのたたかいになっています。引き続き、皆さまのご注目とご支援をお願いいたします。