ラスパイレスさんやパーシェさんは、19世紀後半のドイツで活躍した経済や統計の学者です。
多くの品目の価格変化率と支出額割合についての統計が整備され、それらを使って世界各国が物価指数の算出・公表をするようになったのは20世紀になってから。それより古いので、2人は各品目の価格に購入数量を掛けて代金を計算する考え方でした。
現実の世界では、価格が安くなった品目の購入数量を増やして価格が高くなった品目の購入数量を減らすのが普通。しかし、物価指数の買い物かごの計算では、基準時点と比較時点の購入数量を変えると、価格が変化した影響だけを示すのが難しい。そこで、「基準時点と比較時点の購入数量は同じ」という仮定にしました。では、2人の違いは何でしょう。
ラスパイレスさんは「基準時点の購入数量で固定する」というルールにしました。例の「ミカン価格は2割低下、リンゴ価格は3割上昇、バナナ価格は変わらず」の果物物価指数モデルで考えます。
今回は、基準時点の果物の単価と購入数量を「ミカンは1個50円で10個、リンゴは1個100円で3個、バナナは1本50円で4本」と仮定しました。図の通り、基準時点の買い物かご合計代金は1000円になります。
価格の変化率を反映させると、比較時点の単価は、ミカン40円、リンゴ130円、バナナ200円です。比較時点の購入数量は、基準時点と同じです。比較時点の買い物かごは「ミカンは1個40円で10個、リンゴは1個130円で3個、バナナは1本50円で4本」となるので、合計代金は990円です。
この図をよく見て考えると、基準時点の購入数量で固定する場合は、各品目の基準時点の代金に基準時点~比較時点の価格変化の倍率を掛ければ、比較時点の代金が計算できることが分かります。
そのため、今は各品目の代金(支出額割合)と価格変化率を使う進化形のラスパイレス方式で計算できているのです。
ラスパイレス方式は「基準時点の買い物の仕方を比較時点にもすると買い物の合計代金はどう変わるか」というのが根本の考え方です。価格変化によって比較時点に購入数量が変わる現実を無視している点に不満が残ります。