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「最高裁判決への対応に関する専門委員会設置強行に抗議し、改めて真摯な謝罪と基本合意書の締結に向けた誠実な協議を求める声明」を発出しました

2025.8.14

“「最高裁判決への対応に関する専門委員会設置強行に抗議し、改めて真摯な謝罪と基本合意書の締結に向けた誠実な協議を求める声明」を発出しました|いのちのとりで裁判全国アクション

2025(令和7)年8月12日

内閣総理大臣  石 破   茂  殿
厚生労働大臣  福 岡 資 麿 殿

「最高裁判決への対応に関する専門委員会」設置強行に抗議し、改めて真摯な謝罪と基本合意書の締結に向けた誠実な協議を求める声明

いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護引き下げにNO!全国争訟ネット(全国弁護団)

1 本年8月8日、厚生労働大臣は、記者会見において、生活保護費減額処分を違法として取り消した「最高裁判決への対応に関する専門委員会」の初会合を同月13日に開くと発表し、厚生労働省は、専門委員会の名簿を公開しました。

専門委員会に関しては、先ずは謝罪のうえ全面解決に向けた協議を求めている私たちの頭越しに、厚生労働大臣が本年7月1日に設置方針を公表して以来、私たちは方針撤回を強く求めて来ました。それにもかかわらず、その設置が強行されたことは極めて遺憾であり、厳重に抗議します。

2 本年6月27日の2つの最高裁判決により違法判断が確定している以上、違法とされた2013年から2015年にかけて行われた保護基準の改定(以下「本件改定」といいます。)を白紙撤回し、当該基準改定によって減額された保護費全額を遡及支給すべきことは明らかであり、今さら専門委員会で改めて審理検討する必要はないはずです。

すなわち、本判決が本件改定を違法と判断したことにより、生活保護利用者は、現在、本件改定前の基準を前提とする法律上の具体的な給付請求権を有しています。仮に、これらを事後的に減額するようなことがあれば、事後法による不利益変更であり、法の不遡及の原則という基本原則に違反し、到底許されるものではありません。

仮に、専門委員会で検討すべきものがあるとすれば、2013年報告書で増額すべきとされた生活保護利用者に対して、その増額分を満額支給するか否かです。増額分の2分の1処理については、宇賀裁判官反対意見は「合理性にも疑問が残る」としています。これを是正することは、生活保護法8条2項に適合するように行う利益変更ですから、法の不遡及の原則とは抵触しません。多数意見も「一定の合理性」がある、林裁判官補足意見も「不合理であるともいえない」と、あくまでも厚生労働大臣に一定の裁量権を認める司法審査基準を適用しただけであり、いずれも積極的に合理性を肯定しているわけではありません。また、2014年改定の際の消費増税に対応するための増額改定についても上記と同様に利益変更ですから、法の不遡及原則とは抵触しません。

裁量権を有する厚生労働大臣は、むしろ、増額分についてのみ2013年報告書の結果をそのまま反映するとともに、2014年改定の際の消費増税に対応するための増額改定部分を反映するべきです。

3 しかるに、今般、公表された委員名簿を見ると、行政法の専門家が2名いるのはともかく、生活保護基準部会(以下、「基準部会」といいます)の部会長を始めとする委員が6名も入っており、何故か財務省と関係の深い財政論を専門とする経済学者が1名入っています。かつて基準部会には、長年生活保護基準等について研究をし、厚生労働省に対する苦言も厭わない委員が複数名いましたが、こうした委員はいずれも退任され、本年6月の再開後の基準部会には、生活保護基準に関する専門家が一人もいないという状況にあります。

杞憂に終わることを願っていますが、こうした専門委員会の委員構成からすれば、違法判断を受けた改定当時に遡って、改めて別の理由をつけて生活保護基準の減額改定を行おうとしているのではないかとの疑念を払拭することができません。万一仮に、このように新たな減額改定が行われることになれば、上述の法の不遡及原則に真っ向から反することになります。通常は2年近くかけて行われる基準部会での見直し作業を、急ごしらえの専門委員会がわずか数か月で強行するようなことがあれば、私たちは到底容認することができません。「今後は、…丁寧な手続による検討が進められ、その結果について意を尽くした説明がされることを期待したい」という林道晴裁判官の補足意見にも抵触します。

4 国は、10年以上の法廷での争いの結果、最高裁での違法判断が確定したことの重みを自覚すべきです。訴訟の勝者である原告側に対する一言の謝罪さえなく、10年以上放置されてきた生存権侵害が、判決から1か月半が経過しても是正されない異常事態が続いています。今さら蒸し返しの審議などあり得ず、可及的速やかな被害の全面回復が必要です。

私たちは、国に対し、先ずは原告及びすべての生活保護利用者に真摯に謝罪し、一連の争訟の全面解決のための基本合意書の締結に向けた誠実な協議を行うことを改めて強く求めます。そして、仮に、専門委員会の審議結果をふまえて最高裁判決に対する対応策を決めるというのであれば、私たちの意見を聞き置いたという形式的な体裁を取り繕うだけでなく、私たちの意見を審議結果に十分に反映させるための措置を講じることを求めます。

以上


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