2025.12.14

12月9日(火)、衆議院第一議員会館多目的ホールにて、ハイブリッド形式の「司法軽視の再減額方針の撤回を求める緊急院内集会」が開かれました。
会場には150人、オンラインでは198拠点の参加がありました。今回も、国会議員や多くのマスコミ、ネットメディア記者が駆け付けました。
今回の集会は、厚労省が11月21日に公表した最高裁判決を受けての対応方針について、補償が一部にとどまること、原告とそれ以外の生活保護利用者への対応を分けるものであることから、その撤回を求めて緊急に開催したものです。
司会は、共同代表の雨宮処凛さんと稲葉剛さん。
開会の挨拶は、雨宮処凛さんが、11月21日の厚労省の補償方針が何度読んでもわかりにくく、かつ問題の多いものだと批判し、原告に向かい合って謝罪してほしいと求め、原告と原告以外を分断することなく連帯していこうと呼びかけました。
最初に、法学研究者123名による、最高裁判決に従わない厚生労働省の対応に対する緊急声明が紹介されました。

尾藤廣喜弁護士が、基調報告を行いました。
生活保護基準について争った朝日訴訟、生存権裁判(老齢加算、母子加算廃止訴訟)を振り返り、ともに生活保護利用者が声を上げて始まったこと、そして生存権裁判最高裁が示した判断枠組で、基準変更が違法とされる場合を示したことを特徴としてあげました。ともに最高裁では原告敗訴しましたが、この生存権裁判最高裁判決の判断枠組みが、今回の原告勝訴にいたったことを強調しました。
2010年初頭の政治状況、たぴ重なる基準引き下げをふまえ、「前代未聞の引き下げに対しては前代未聞の反撃を!」で始まったこの裁判の意義を確認し、地裁判決が勝訴を重ねることになった理由を分析しました。そのうえで、最高裁判決の意義を確認し、原告が全面に立ってたたかったことが勝訴に導いたと話しました。最高裁判決後は、厚生労働省は原告に謝罪せず、専門委員会に審議させながら都合の良い所だけを取り出し、一部補償にとどまる対応をしていることを批判しました。
最後に、私たちは朝日訴訟以来の歴史的成果に確信を持とう、原告、支援者、弁護団の闘いを高く評価しよう、国に謝罪を求め、厚労省の対応策を撤回させ、再発防止策の確立と生活保障法の制定を求めていこうと呼びかけました。
北海道の宮崎砂和子さん
病気のため生活保護を利用し、障害のある子どもと暮らしています。子どもが成人式を迎え、背広を買ったがそれ以外は買えていません。北海道は寒く光熱費もかさみ、冬季加算だけでは足りず体調を崩しました。食べ盛りの子どもにひもじい思いをさせてしまいました。恥を忍んで原告になり、この思いを伝えてきました。最高裁後の国の不当な対応に腹を立てています。これからもたたかっていきます。
富山の村山和弘さん
生存権裁判の原告の方(88歳)の「私は生きている限り闘います」は、私の気持ちでもあります。国は私たちに謝罪をして、再減額をしないようにしてほしいと思っています。何より違法状態を続けていることを許せません。全国の皆さんとともに取り組んできたことを、勝利するまで続けていきたいです。一緒に頑張っていきましょう。
青森の郡川恵美子さん
青森地裁、仙台高裁で勝訴したことが素直にうれしいです。最高裁判決後、国は違法状態を続けています。補償がおり、この冬はあたたかい部屋で過ごせると期待していました。でも国は、命にかかわる間違いを続けており、本当に腹が立ちます。「恥ずかしくないか」と聞いてみたいです。私たち生活保護利用者はいつまで我慢し続けなければならないのですか。生活保護利用者全員に、同じ補償をしてください。頑張っていきましょう。
大阪の新垣敏夫さん
最高裁判決以降、私たちに向き合わない厚労省に怒りしかありません。補償額や補償期間も明らかにせず、毎回「待ってほしい」と繰り返した厚労省職員。最高裁で勝ったのに、なぜこんな気持ちにならなければならないのか。改めて最後までたたかっていきます。
愛知の澤村彰さん
私たちは、基準引き下げによって食事は3回から2回に減らしました。物価高でますます厳しい生活です。最高裁までの長い時間のたたかいを思い返すと涙が出ます。まだ厚労省は抗います。また、新たなたたかいがスタートするかもしれません。マスメディアの方はぜひこの事態を報じてください。
神奈川の高橋史帆さん
10年以上皆さんとともに頑張ってきました。午前中の厚労省説明では、対応策が決まってしまうのかと思わざるをえませんでした。正直、私も疲れてきているが、社会正義のために新たな裁判をするつもりです。命を守るたたかいをしていきたいと思います、ご支援をよろしくお願いします。
(原告以外の生活保護利用者)
北海道の荒川豊さん
病気のためフルタイムで働くことが難しく、生活保護を利用しています。審査請求運動にはかかわりましたが、子どもがバッシングを受けることを恐れて裁判は断念しました。原告にはならなかったけれども裁判支援で一緒にたたかってきましたので、地裁、高裁判決の原告勝訴に喜びました。私のように原告になりたくてもなれなかった方は、全国に多くいると思います。分断をあおるような厚労省の方針は許せません。原告以外にも同額の補償をしてください。
東京の川西浩之さん
厚労省が公表している対応策は、原告と原告以外で差をつけており、生活保護法2条の無差別平等の原理に違反すると思います。支給額がだんだん引き下がり、結局のところ、生活保護利用者は早く死んでほしいと言われているような気になります。厚生労働省が、津久井やまゆり園事件の犯人の考え方に似てきていると思います。怖いです。原告にはなりませんでしたが、原告にならなかったことが非常に悔しいです。
(支援者)
大阪の雨田信幸さん
原告以外の生活保護利用者の声を紹介します。必ず傍聴に来てくれていた方は、「きっと勝つで」と毎回キットカットを渡してくれていました。最近会い、被害回復はいつになるのかと寂しそうに尋ねてきました。毎日のように電話をかけてこられる方もいます。京橋の街頭宣伝でお会いする人は、国は、生活保護利用者が死ぬまで待っているのではないかと思ってしまうと言っています。きちんと被害回復することが大事で、そのためにこれからもやっていきたいと思っています。
愛知の榑松佐一さん
全国のネットワークがあって、裁判の勝訴を勝ち取ってきました。これを力にして、厚労省の酷い対応に立ち向かってまいりましょう。
優生保護法訴訟の場合は、最高裁判決の翌日に担当大臣、数日後には首相が原告に謝罪しました。その後、国は被害回復の対応と検証をしようということに合意し、立法措置もされてきました。まだまだ使われていませんが、子ども家庭庁は被害を受け止めて対応してきました。
この裁判でも当然そうするものだと思っていましたが、そうではありませんでした。反省をしないなんて信じられません。三権分立に反していますし、日本の司法制度に対する大きな挑戦です。法学研究者の緊急声明が出されましたが、そう思っているのは賛同した123人だけでないでしょう。ほかの研究者、裁判官も怒っていると思います。
専門委員会に法学者を3人入れ、その3人ともが再減額は許されないという判断をしたにもかかわらず、厚労省は再減額をしました。こんなことは許されません、最高裁判決を活かしていきましょう。
小久保哲郎弁護士は、次のように話し、集会を締めくくりました。
(国の対応策の問題点3つあげたうえで)不誠実な対応の背景には、違法な引き下げの首謀者が未だに政権の中枢にいること、残念ながら今なお国民の中に生活保護への差別と偏見が残っていることがあります。その意味で、私たちの闘いはまだ「道半ば」であることを、最前線で闘いながら痛感しています。
しかし、決して10数年前の振り出しにもどっているわけではありません。補償額は値切られたとはいえ、これから300万人の生活保護利用者に対し、総額2000億円規模の被害補償がされます。支給事務に関する自治体への補助に401億円、相談センターの設置等に17億円が使われます。
これは世界初で、前例のないすごいことです。
10数年前に国が引き下げを強行したとき、国は、私たちの力を見くびっていたと思います。生活保護利用者なんてどうせ力がないから蟻のように踏みつぶしてしまえばいいと考えていたと思います。でも、私たちは、ただの蟻の大群ではなく、巨象を倒した蟻の大群です。
私たちの運動は歴史に残る大きな成果をあげましたが、未だ道半ばです。分断や対立に決して陥らず、10数年のたたかいで培った団結と連帯をまもり、皆さんと闘い続けたいと思います。
集会のなかで、国会議員の方々から、厚生労働省対応を批判し、国会審議でも一部補償対応を撤回させるよう尽力する旨の熱い応援メッセージが続きました。
ご発言いただいた方は、次の通りです(発言順)。
共産党・山添拓議員、 立憲民主党・柴田勝之議員、共産党・仁比聡平議員、共産党・堀川あきこ議員、れいわ新選組・木村英子議員、共産党・本村伸子議員、共産党・白川容子議員、社会民主党・ラサール石井議員、立憲民主党・打越さく良議員、社会民主党・福島みずほ議員。
集会終了後、引き続いて記者会見を開きました。多くの記者から熱心に質問が出て翌日からの報道につながりました。以下、一部を紹介します。
結局、生活保護を減額? 「当事者の声を聞かず決めた」撤回求め集会 裁判の原告だけ上乗せ方針「悔しい」:東京新聞デジタル
生活保護訴訟 減額調整の政府方針巡り原告団が不服申し立て検討 | 毎日新聞
生活保護めぐる違法判決、原告側は再提訴視野 国の「再減額」に反発:朝日新聞
生活保護引き下げ分の全額支給見送り 原告と弁護団が撤回要請 | NHKニュース | 厚生労働省
生活保護基準引き下げ、最高裁で「違法」確定も…厚労省が“独自基準”で再減額 法学者120人「法治国家の破壊」指摘 | 弁護士JPニュース
審査請求から再び裁判へ 厚生労働省の生活保護減額支給方針受け、いのちのとりで裁判原告ら | 生活ニュースコモンズ