2025.9.30
本年6月27日の歴史的な最高裁での勝訴判決から約3カ月。高裁での勝訴判決が相次いでいます。

9月17日午後2時、名古屋高等裁判所金沢支部第1民事部(大野和明裁判長)は、石川県内の生活保護利用者3名と富山県内の生活保護利用者5名が、金沢市や富山市ほか石川県および富山県の自治体を被告として提訴した件につき、生活保護基準引き下げ処分を違法として取り消す原告勝訴判決を言い渡しました。
地裁判決段階では、石川訴訟は原告敗訴、富山訴訟は原告勝訴と結果が分かれていましたが、6月27日最高裁判決をふまえ、高裁判決はどちらも原告勝訴でした。なお、石川・富山訴訟ともに国賠請求をしていましたが、最高裁判決同様に請求は認められませんでした(石川訴訟17~19頁、富山訴訟18~19頁)
生活保護基準引下げを違法とした名古屋高等裁判所金沢支部判決を高く評価し、同判決の確定、生活保護利用者及び元利用者への補償及び生活保障法制定を強く求める会長声明|金沢弁護士会
生活保護基準引下げの違法を宣言した名古屋高等裁判所金沢支部判決を高く評価し、同判決の確定と、生活保護利用者及び元利用者への補償、並びに「生活保障法」の制定を求める会長声明 | 富山県弁護士会

続いて、9月27日午後1時15分、名古屋高等裁判所民事第2部(朝日貴浩裁判長)は、津市ほか三重県内の保護利用者27名(提訴時、その後死亡等により被控訴人は17名)が、三重県内の自治体を被告として提訴した件につき、石川・富山訴訟と同様に勝訴判決を言い渡しました。三重は地裁判決に引き続いての原告勝訴でした。
今回の3つの高裁判決は、その判断枠組みや違法性の判断は、最高裁判決と基本的に同じです。
すなわち、老齢加算訴訟最高裁判決と6月の最高裁判決を引用して「判断過程審査」による判断枠組みを示し(石川訴訟11~12頁、富山訴訟11~12頁、三重訴訟2~3頁)、デフレ調整について、「物価変動率のみを直接の指標として用いることについて、基準部会等による審議検討が経られていない」点が専門的知見を欠くとして違法性を認めました(石川訴訟13~16頁、富山訴訟13~17頁、三重訴訟3~7頁)。但し、ゆがみ調整と2分の1処理について、石川訴訟・富山訴訟判決は、最高裁判決(多数意見)と同様に違法性を否定しましたが(石川訴訟12~13頁、富山訴訟12~13頁)、三重訴訟判決は判断を示しませんでした。
9月17日の判決後に、石川と富山訴訟合同で、判決報告会と記者会見がありました。富山訴訟原告の村山和弘さんは、亡き妻から原告を引き継いて闘ってきました。「(勝って)よかったなというところですね。皆の力でついに、この勝利に到達したと、歴史的な勝訴だということを感じています。」と話しました。石川の原告は「長い闘いだった」と話し、勝訴を喜びました。
翌9月18日には原告側と厚労省の最高裁判決後の第5回協議が持たれました。
富山弁護団の西山貞義弁護士、石川弁護団の北島正悟弁護士はともに、「上告するということは最高裁の結論に従わないと言っているようなものだ」と上告断念を強く求めました。村山さんは、オンラインで参加し、「私も闘病中だが生きて最高裁判決を聞くことができた。しかし、その後の国の対応には残念ながら不信感がある。人間のため、社会のために国があるのではないか」と訴えました。
生活保護基準引き下げ、名古屋高裁も「違法」それでも解決への見通し立たず…原告側は国への不信感強める | 弁護士JPニュース
地裁で提起された31の同種訴訟はすべて判決がでており、原告側が20勝11敗と圧勝でした。最高裁判決まで高裁では原告側の7勝5敗でしたが、3つ勝訴が増えて10勝5敗となりました。
国は、最高裁判決が出た6月27日から現在にいたるまで、原告に謝罪さえせず、不誠実な態度を続けています。原告を無視するかのごとく、最高裁判決への対応策を検討する専門委員会を設置し、協議させています。そして、全国の訴訟についても闘う姿勢を崩していません。
今後も高裁判決が続く見込みですが、最高裁の判断に従い、原告勝訴判決が続くことになります。最高裁の確定判断が出ているのに、被害回復がなされないため高裁での違法判決が相次ぐという、法治国家にあるまじき異常事態です。
国は、最高裁判決を真摯に受けとめ、一刻も早く、原告とすべての生活保護利用者に謝罪し、被害回復措置を講じるべきです。