2025.2.1
1月29日 福岡高等裁判所で20例目(高裁では2例目)の勝訴判決が言い渡されました!
処分を取り消すという判決主文が読み上げられた瞬間、控訴人席の中島久恵原告団長が「勝ったぁ」とはっきりした声を上げました。中島さんの魂からの喜びの声を聞いて、弁護団でもこみ上げてくるものがありました。
10年にわたるたたかいが報われた瞬間でした。
2025年(令和7年)1月29日、福岡高等裁判所(松田典浩裁判長)は、生活保護基準引下げ処分の取り消し等を求めていた福岡県内の生活保護利用者39名による控訴について、原告の請求を棄却した第1審判決を変更し、同処分の違法性を認めた上で処分を取り消すという原告(控訴人)側の逆転勝訴判決を言い渡しました。
全国29の地方裁判所に提起されている同種訴訟において20例目の勝訴判決です。高等裁判所でも、名古屋高裁に続く2例目の勝訴判決であり、高裁レベルでも今回の基準引下げの不合理性が明確になってきたといえます。
裁判の主な争点は、第1審に引き続き、➀判断枠組みをどうするのか、➁ゆがみ調整の適否、③デフレ調整の適否でした。
本判決は、判断枠組みについて、いわゆる老齢加算訴訟の最高裁判決等を参照しながら、生活保護(生活扶助)基準の改定をした厚生労働大臣の判断の過程ないし手続が適切であったかどうかを審査する姿勢を示し、厚生労働大臣の裁量権行使の在り方に一定の限定を加えました。
また、判決は、「統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性、被保護者の生活への影響の有無・程度等の観点から」審査すると指摘し、「被保護者の生活への影響」についても重視する姿勢を明確に示しました。
次に、引下げ理由のうち「ゆがみ調整」については違法性が認められないとしましたが、「デフレ調整」については、「生活扶助相当CPIの算出に当たり家計調査に基づくウエイトを用いた点において、その過程に生活保護法8条1項の趣旨・目的に反する過誤、欠落があったということができ、裁量権を逸脱又は濫用したものといえるから、違法性が認められる。」として、原告側の主張を認めました。
「家計調査」は国民全体の消費実態を調査するもので、生活保護世帯の消費実態とはまったく異なる内容となっています。裁判所が問題にしたのは、端的にいえば、厚生労働大臣が引下げを決める判断過程において被保護世帯の消費構造をきちんと踏まえなかった点でした。判決は、「厚生労働省は、被保護世帯又はこれに準じた世帯の消費構造を調査した結果に基づいて被保護世帯のウエイトを算定すべきであったというべきである。」と明言していますし、厚生労働省が被保護世帯の消費実態を調査している「社会保障生計調査」を用いることも可能であったことも指摘しています。
判決後の報告集会では喜びの声があふれました。原告の方々も口々に「勝ってよかった!」「うれしい」「長年のご支援、ありがとうございます!」と感謝の言葉を述べられていました。
国側は上告することになるでしょう。そのため、次は最高裁判所でのたたかいに移ります。
最高裁でも完全勝利して、今回の基準引下げの不合理性を明らかにするとともに、今後の保護基準の改定が被保護世帯の生活実態に応じた適正な設定になるよう、生存権保障を第一の目的とした保護行政の実現につなげるたたかいをしていきたいと思います。
全国各地の訴訟の勝利と何より最高裁での勝利に向けて、引きつづき、ご支援をお願いいたします。