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4月14日、大阪高裁で逆転敗訴判決が言い渡されました。私たちは、さらに全国の団結を固め、この「先祖返り判決」を必ず克服します!(判決要旨・全文、弁護団声明と判決評価を掲載しています)

2023.4.20

いのちのとりで裁判全国アクション

2023年4月14日午後3時、大阪高等裁判所第1民事部(山田明裁判長、柴田義人主任裁判官)は、保護費の減額処分の取消しを命じていた一審大阪地裁判決を取消し、請求を棄却する逆転敗訴判決(以下、「本判決」といいます)を言い渡しました。

これまでの19の地裁判決は9勝10敗とほぼ勝敗が拮抗し、昨年5月の熊本地裁判決以後の10判決では8勝2敗と潮目が完全に変わっていました。

判決一覧・勝訴判決論点表(PDF)

4月14日、大阪高裁で逆転敗訴判決が言い渡されました。私たちは、さらに全国の団結を固め、この「先祖返り判決」を必ず克服します!(判決要旨・全文、弁護団声明と判決評価を掲載しています)|いのちのとりで裁判全国アクション

そんな中、最初の控訴審判決として言い渡された本判決は、こうした流れに逆行し、「最低最悪」だった初戦の名古屋地裁判決に「先祖返り」したかのような内容でした。

しかも、以下概説するとおり、判断枠組みを大きくすり替えることで中身の審査にはほとんど入らない点において特異で、全く説得力を欠く判断です。

外部専門機関の役割を否定

本判決は、まず、「生活保護法は外部専門家による検証を要件としていないから、専門家による検証等は、厚生労働大臣による判断の合理性を担保する手段」に過ぎないとし、厚生労働大臣自体に専門性が備わっていることを前提に専門機関の役割をほぼ全否定しています(判決11頁、要旨1頁)。

しかし、これは、保護基準の設定は専門機関の審議検討を踏まえて行うこととされていた生活保護法立法当時の議論や、実際に保護基準の改定が専門機関の審議検討を踏まえて行われて来た従前の経緯に真っ向から反します。

「確立した専門的知見との矛盾」という独自文言で最高裁判決を改変

そして、本判決は、老齢加算訴訟最高裁判決が求めている「専門的知見との整合性」の審査について、違法となるのを「確立した専門的知見との矛盾が認められる場合」に限定するという、被告国側も主張していない独自の高いハードルを加え、最高裁判決の規範を改変しています(判決11頁、要旨1頁)。

しかし、今回のように前例のないことがされた場合、「確立した専門的知見」が存在すること自体あり得ず、原告側に不可能な立証責任を課すものです。これでは、厚労省が独自に勝手なことをすればするほど許されることになってしまいます。 東京地裁判決(要旨1~2頁)が、専門家の関与の有無等が重要な意味を帯び、「当該改定が基準部会等による審議検討を経ないで行われたものである場合には、当該改定が専門的知見に基づく高度の専門技術的な考察を経て合理的に行われたものであることについて、被告側で十分な説明をすることを要」するとしているのとは対照的です。

「それなりの合理性」でOK

本判決は、この規範定立部分で厚労大臣に極めて広範な裁量を認めたことから、個別論点においても、「一応合理的」(判決19頁、29頁)、「一定の合理性」(21頁、22頁、25頁)、「それなりの合理性」(33頁)という緩やかな指標で被告国の説明を肯定し、丸のみしています。

この判決の全体構造は、名古屋地裁判決をはじめとする敗訴判決群に共通するものです。

「要保護者の…必要な事情を考慮した…生活の需要」(法8条2項)は無視

また、原審大阪地裁判決は、「生活保護世帯に4.78%の可処分所得の実質的増加があった」とする「デフレ調整」の判断過程に「統計等の客観的数値や専門的知見との整合性」があるかを正面から審査しましたが、本判決は、「生活保護受給世帯の消費構造を考慮するか、考慮するとしてどの程度考慮するかは、…厚生労働大臣の裁量」とし、この点一切審査していません(判決30頁、要旨5頁)。

これは、保護基準は「要保護者の年齢別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要」を満たすに十分なものでなければならないとして、厚労大臣の裁量に枠をはめている生活保護法8条2項の趣旨を全く考慮していないことに起因しています。

厚労大臣に専門性があるという傲慢なフィクション

「デフレ調整」の目的は、本来、「生活保護受給者の実質的購買力を維持しつつ、可処分所得の実質的増加分を引き下げる」というものだったはずです。しかし、本判決は、「生活保護世帯と一般国民との不均衡の是正」へと判断の土俵をすり変えようとする国側の訴訟戦術に乗っかり、「デフレ調整の実施といった専門技術的知見を踏まえた政策判断の当否について、(基準部会の)意見を聴取しその取りまとめを依頼するのが適切であるとは必ずしもいえない。他に、このような意見聴取を行うべき適切な専門家機関が存在することを認めるに足りる証拠もない」とまで述べています(判決24頁、要旨3頁)。

これは、「厚労大臣(厚労省職員)自体に専門的知見が備わっているので、外部の専門家の専門技術的考察を踏まえることなく、むき出しの政策判断をしてもよい。むしろ、そのような政策判断について外部の専門家の意見を聴くのは適切ではない」という、傲慢な国側の主張を追認するものです。

裁判所がこのようなことを言ってしまえば、もはや司法の自殺行為ではないでしょうか?

「みんな苦しいんだからガマンしろ」~ナショナルミニマムに対する無理解

さらに、原告側が力を入れて主張立証した原告らの生活実態については、「少額の保護費の減額であっても生活に対する影響は極めて大きく、本件各決定による減額改定で、不便な生活をせざるを得ない状況に追い込まれ、親族や知人との交流を断念せざるを得ないなどの窮状に陥り、多大な苦痛を感じていることは容易に理解できる」と一見理解を示したふりをしながら、「上記のような生活環境の悪化による苦痛は、リーマンショック後の経済状況の悪化の中で…国民の多くが感じた苦痛と同質のもの」と切り捨てました(判決38頁、要旨11頁)。

これは、「みんな苦しいんだから我慢しろ」という、本件引下げ当時の自民党の政策と同じ思想です。しかし、国民生活の最低限(ナショナルミニマム)である生活保護基準は、「健康で文化的な最低限度の生活の需要」を満たす基準を「あくまで合理的な基礎資料によって算定」して導き出されるべきものです。本判決は、こうした保護基準がもつ意義を全く理解していません。

4月14日、大阪高裁で逆転敗訴判決が言い渡されました。私たちは、さらに全国の団結を固め、この「先祖返り判決」を必ず克服します!(判決要旨・全文、弁護団声明と判決評価を掲載しています)|いのちのとりで裁判全国アクション

判決後に開かれた報告集会にはマスコミや全国から集まった原告、支援者など約160人が詰めかけました。

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原告共同代表の新垣敏夫さんは、「今日の結果は、非常に怒り悔しさに満ちた判決だったと思います。控訴審でも引下げによる不利益を陳述してきたが全否定されて非常にショックです。今は言葉になりません」と語りました。

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同じく原告共同代表の小寺さんは、「この裁判で勝って、そういうこと(生活保護の利用をためらうことによる悲劇)をなくして、誰もが生活保護を受けられるんだよ、誰もが幸せになれるんだよと伝えたいと思っていました。判決は本当に悔しいし腹が立ちます。けれど、これからも闘い続けます。さらに大きなご支援をお願いいたします」と力強く訴えました。

4月14日、大阪高裁で逆転敗訴判決が言い渡されました。私たちは、さらに全国の団結を固め、この「先祖返り判決」を必ず克服します!(判決要旨・全文、弁護団声明と判決評価を掲載しています)|いのちのとりで裁判全国アクション

弁護団副団長の小久保哲郎弁護士は、「司法に対する期待、私たちの思いを踏みにじる判決には失望と怒りしかありません。原告は高齢者も多く全国各地で亡くなる人も多く出ています。今日も全国各地から多くの方が勝訴判決を期待して集まっていただいているが、亡くなった方の思いも受けて、最後まで前を向いて一層団結を固めて闘っていきたい」と述べました。

4月14日、大阪高裁で逆転敗訴判決が言い渡されました。私たちは、さらに全国の団結を固め、この「先祖返り判決」を必ず克服します!(判決要旨・全文、弁護団声明と判決評価を掲載しています)|いのちのとりで裁判全国アクション

集会の最後には参加者で「頑張ろう!」の声をあげ、後続の大阪高裁と最高裁での勝利獲得を誓い合いました。

私たちは、全くあきらめていません。
「だまってへんで、これからも!」

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いのちのとりで裁判全国アクション判決要旨

いのちのとりで裁判全国アクション判決全文

いのちのとりで裁判全国アクション判決別紙1

いのちのとりで裁判全国アクション判決別紙2

いのちのとりで裁判全国アクション判決別紙3

いのちのとりで裁判全国アクション判決別紙4

いのちのとりで裁判全国アクション判決別紙5

いのちのとりで裁判全国アクション弁護団声明

いのちのとりで裁判全国アクション判決評価メモ

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