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憲法第25条
  1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

憲法25条1項は、すべての国民に「生存権」という人権が保障されていると言っています。「生存」権といっても、ただ「食べて寝て、生き永らえられればよい」というわけではありません。

すべての国民は、「健康で文化的な生活」、つまり人として人に値する生活(人間らしい生活)をおくることを「権利」として保障されているのです。

そして憲法25条2項は、その生存権保障を現実のものとするために、国が社会保障制度の構築など必要な環境整備をする義務を負っていることを明らかにしています。

憲法25条が定める生存権保障を具体化するために定められたのが生活保護法です。

厚生労働大臣が、「健康で文化的な最低限度の生活」の需要をみたすのに十分な基準(生活保護基準)を決めることになっています(生活保護法8条)。

生活保護基準は、住んでいる地域や家族構成、年齢などによって異なる、具体的な金額として定められています(例えば、東京都で独り暮らしであれば生活費約8万円、住宅費約5万円の13万円強)。

この生活保護基準は、わが国の生存権保障の水準(いわゆるナショナル・ミニマム)ですから、さまざまな社会保障制度等の基準として参考にされ、連動しています。

生活保護基準と連動している制度は、最低賃金、住民税非課税基準、国民健康保険・介護保険の保険料や一部負担金の減免基準、保育料や就学援助の基準等々・・・国が認めただけでも38以上あります。

したがって、生活保護基準が引き下げられると、生活保護を利用している人はもちろん、生活保護を利用していない人たちも負担増となり、大きな不利益を被るのです。

詳しくは下記リンク「あなたの暮らしも危ない! 誰が得する生活保護基準引き下げ」(PDFパンフレット、日本弁護士連合会サイトより)をご覧ください。


老齢加算(2006年)、母子加算(2009年)の廃止に引き続き、生活扶助(生活保護の生活費部分)の基準が、2013年8月から引き下げられました。2014年4月、2015年4月と3回に分けて最大10%・平均6.5%も引き下げられたのです。

これは前代未聞の引き下げ幅であり、生活保護利用世帯の実に96%が引き下げの影響を受けることになりました。

学識経験者の専門部会(社会保障審議会・生活保護基準部会)は、安易な引き下げに消極的な意見を出していたにもかかわらず、引下げ額の約8割は、部会で検討の対象にさえされなかった「物価下落」を理由として行われました。しかも、学説上も実務上も全く前例のない「生活扶助相当CPI」という特殊な数値操作がその根拠とされています。

2012年12月の総選挙で政権を奪取した自民党の公約に掲げられた「生活扶助基準の1割カット」を実現するために相当無理なことが行われたのです。
※母子加算は2009年12月に民主党政権下で復活しました。

このように乱暴な引き下げには、生活保護利用者からも大きな怒りの声があがり、1回目の引き下げに対しては1万件以上、3回の合計では3万件近い審査請求(不服申立て)がなされています。

また、2014年2月の佐賀地裁を皮切りに、現在24都道府県で生活保護基準引き下げ違憲訴訟が提起され、立ち上がっている原告の数は800人近くに上っています(2015年9月1日現在)。

不当な引き下げに対する当事者の抗議の声も前代未聞の規模で広がっているのです。

詳しくは下記リンク「我が国の生存権保障水準を底支えする生活保護基準の引下げに強く反対する会長声明」(日本弁護士連合会サイトより)をご覧ください。


あまり知られていませんが、2012年8月、消費増税法と一緒に社会保障制度改革推進法という法律が成立しました。

この法律は、「自立を家族相互、国民相互の助け合いの仕組みを通じて支援していく」として自己責任を強調し、「障給付の重点化・制度運営の効率化を通じて負担の増大を抑制」するとして、社会保障給付全体の抑制を志向しています。

実は、この法律の附則2条に、生活保護基準の引き下げ等の生活保護改革が明記されており、生活保護費の削減は社会保障費全体の削減の突破口として位置づけられているのです。

実際その後、この法律に基づいて、1.70~74歳の医療費窓口負担割合の増加、2.介護保険の利用者負担の増加、3.介護度の軽い者の保険対象からの除外などが決められ、さらに年金支給開始年齢の引き上げや医療費抑制策などが検討されています。

憲法25条が保障する生存権は、既にこの法律によって骨抜きにされかかっていると言っても過言ではありません。

このまま黙っているわけにはいきません。

憲法25条を守り、誰もが社会から排除されることなく、人間らしく生きることのできる社会保障制度を求めて、集い、つながり、そして声をあげましょう!

詳しくは下記リンクをご覧ください。

10.28 生活保護アクションin日比谷 25条大集会