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武見厚労大臣の発言に抗議し、発言撤回と上告断念を求める要請書

2023.12.4

厚生労働大臣 武 見 敬 三  様

いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護引き下げにNO!全国争訟ネット

生活保護費が2013年からの史上最大の生活保護基準引下げ(以下「本件引下げ」といいます。)について11月30日、名古屋高等裁判所が引下げ処分の取り消しと国に賠償を命じる判決を言い渡したことを受け、12月1日、武見厚生労働大臣は、閣議後の記者会見で、本件引下げは「その手順も含めて適切なものだった」とし、その前提として「特に九州の一部の地域などで、こうした生活保護制度というものが極めて好ましくないかたちで悪用されているケースなどが多々あり、かつまた…窓口の職員などが大変深刻な脅威の下に晒されるということが実は多々起きていた」との認識を示しました(厚生労働省HP)。

しかしながら、私たちが知る限り、当時、九州の一部地域での悪用ケースや窓口職員が深刻な脅威に晒されるケースが多々起きていた事実など全くなく、大臣の上記発言は具体的根拠なく生活保護制度に対する悪印象を振りまくものであって極めて悪質です。また、仮にそのようなケースがあったとしても当該ケースに対して厳しく対応すればよいのであって、何の罪もない生活保護利用者全体の保護基準を引下げることを正当化する理由となりえないことは明らかです。

むしろ、本件引下げの背景には、2012年春、人気お笑いタレントの母親の生活保護利用という何ら不正ではない事象を、当時の自民党生活保護プロジェクトチームの主要メンバーであった片山さつき議員らがことさらに問題視したことに端を発した“生活保護バッシング”がありました。このバッシングによって醸成された“国民感情”を背景に、自民党は、2012年12月の総選挙で「生活保護基準10%カット」を掲げて政権復帰し、無理に無理を重ねて強行したのが本件引下げなのです。

名古屋高裁判決は、こうした引下げ強行について、国に「少なくとも重大な過失」があり、「客観的合理的な根拠のない手法等を積み重ね、あえて生活扶助基準の減額率を大きくしているもので違法性が大きい」と厳しく指弾し、事実上国の悪意に基づく数値の捏造を認めたうえで原告らに対する国家賠償を命じたものです。本来、国としては、こうした司法判断を真摯に受け止め、上告等を断念して早期全面解決に向けた方策を検討すべきです。武見大臣の上記発言は、こうした検討を一切行うことなく、早々と判決翌日に、本件引下げ当時と同様の具体的根拠を欠く印象操作によって国の落ち度を糊塗する姿勢を明らかにしたものであって到底容認できません。

そこで、私たちは、武見大臣の上記発言に対して厳重に抗議するとともにその撤回を求めます。また、上告等を断念し、早期全面解決を図ることを改めて強く要請します。

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