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「おまえたちは黙ってろ!」というのはおかしい|当事者の声

神 覚(青森市)

1 経歴
61歳です。私は、中学校卒業後、昭和57年まで大工をしていました。その後昭和58年3月から千葉県船橋市に出稼ぎに行き、社員になって係長を務めたこともあります。しかし、平成9年に母が死亡したため、父の面倒をみるために翌10年に青森市に帰り、タクシーの運転手や警備会社に勤務するなどして平成15年まで働いていました。現在、独り暮らしをしています。

2 生活保護の利用経過
平成15年、生活苦と様々な不安から「死」を考えるようになりました。自暴自棄になり、大変悩んでいた時、「生活と健康を守る会」と出会い、「もう少しがんばってみよう」と思えるようになりました。当時私は、腰痛がひどく仕事ができず、無職でした。早く体を治して働きたいと思っても手持ち金も3,000円位しかなく、病院にも行けませんでした。

平成15年7月、生活保護を利用できるようになってからは、病院で治療を受けながら、20年4月まで運転代行の仕事をしていましたが、会社が倒産するなどし、以来無職です。

現在、脊柱管狭窄症と不整脈、高血圧を患っています。痛くて眠れない、寝返りをうてない、ゆっくりしか歩けない、立ち上がりや座る時「ズキッ」と痛むなど、辛い状態ですが、短時間でも働きたいと思い求職活動をしています。

3 居住環境
私が住んでいる家は築40年位の古いアパートです。昔の造りで、サッシは後付け、木のガラス戸で隙間風が入ってきます。雪の重みで窓が壊れたままのところもあり、板で雪をおさえているので風や雪が入るし、暗くて朝から電気をつけないと見えません。のぎが壊れて穴も開いているので、冬はとても寒く灯油代が月約2万円もかかります。火を細くしたり、できるだけ布団に入って過ごすなど、節約していますが、もうこれ以上節約することができません。

お風呂はありません。歩いて20分位のところにあるお風呂に行っていますが、歩くのも大変だし、入浴料が高くなったので、入浴は週2回にしています。夏は台所で体を拭いたり、髪を洗ったりしています。

トイレは汲み取りです。特に夏は臭いがするのでアパートにいるのが憂鬱です。汲み取り料も年間7,000円位かかりますが、役所からお金が出ないので、一回で7,000円の出費は堪えます。

家具什器は、テレビ、冷蔵庫は出稼ぎ当時のものなので20年以上使用しています。洗濯機は死んだ母が使っていたもので、もう25年位使用しています。二槽式のものです。ガスコンロはもらい物で、15年位前のものです。自分で買ったのは電子レンジと反射式ストーブです。

4 日常生活
毎朝午前7時以降起床しています。ほとんど家の中でラジオを聞いて過ごしています。電気代節約のため、夜7時に電気を消して布団に入り、11時頃に寝ています。

5 食事
朝食は8時頃、食パン2枚とコーヒー一杯だけです。昼食は外出した時以外ほとんど食べません。夕食は午後5時頃、ごはんと味噌汁、おかず2品です。他たまに、仏壇にあげた果物やヨーグルトを食べています。

基準が引き下げられてから食費を更に削り、大好きな焼き魚、煮魚を我慢して1缶100円位の缶詰を食べています。一番好きな食べ物をずっと我慢し続けることはとても辛いことです。

インスタントラーメンは5個入り300円位の物を買っています。野菜は1袋108円のミックス野菜を買って2回に分けて食べています。ジュースは飲まず、お茶や水を飲むようにしています。

6 衣服等の身廻り品
衣類はほとんど買いません。数年に1回、生地が薄くなったり、黄ばんだり、穴が開いた時に下着を買うだけです。体型が変わってサイズが合わず困る時もありますが、ベルトで調整しています。

  

7 外出
週2回、脊柱管狭窄症の治療のため病院に通院しています。他の病気は、月1回通院しています。外出は「生活と健康を守る会」の行事に参加するか、自転車で海を見に行く程度です。

冬以外は自転車で動いていますが、体重があるからかパンクしやすく、タイヤ一つ交換するのに4,000円もかかります。月4,000円の出費は一週間分の食費にあたるのでとても大変で、パンクがこわくて外出するのを控えてしまいます。

たまに親戚や知人の葬式もありますが、香典を出す余裕がないので、知らなかったふりをしたり、「用事があって行けない」と断っています。人としての道にそむいていることが辛くて、とてもみじめな気持になります。こんなことが重なったこともあり、親せきづきあいをしなくなってしまいました。

8 収入状況と老齢加算削減による影響
私の生活保護費は家賃を入れて月97110円です。基準引き下げの影響で、「生活費が大きく減った」というのが日々の生活からの実感です。前に述べたように食事はかなり簡素化しました。お腹を満たすことを重視しているので、炭水化物の摂取が多く、栄養面やバランスを考えることはできません。

床屋さんは、2500円のところから1100円のところに変え、回数も月1回から1か月半に1回に変えました。見た目よりもお金のことを考えて五里刈りにしています。お風呂を週2回にしたのは特に夏は辛いです。もう慣れましたが、古くて汚い台所で髪や体を洗うのは気持ちがめいります。以前のようにせめて週3回は入浴したいと願っています。

以前は、月に何回か釣りや、カラオケなど友人との交流もしていましたが、今はほとんど家で一人で過ごしています。お金にも気もちにも余裕がなくなってしまいました。

このような生活の中で、「楽しみ」や「希望」を感じることが出来なくなってきています。生活保護基準の引き下げは、お金だけではなく、生きていく力をも低下させてしまいました。

9 この裁判にかける思い
この数年、生活保護制度の改悪をはじめ、毎年、社会保障の切り捨てが進められています。私たち生活保護利用者や少ない年金や給料でやっと生活している人たちはどうなってしまうのでしょうか。

私は生活保護を利用するまで厚生年金をかけていました。体をこわすまで、ずっと働いて税金を納め、年金もかけてきたのです。

けれども、日本年金機構から届いたはがきを見ると、年金を62歳から受給すると年445,900円(月37,158円)、65歳から受給すると年899,300円(月74,941円)でした。これでは、アパート代を払うとお金が残りません。この年金で「どうやって生活しろ」というのでしょうか。

私は、生活と健康を守る会があるからやっと今の状態を保っていると思っています。会と出会ってなかったら、会の仲間たちと一緒にいなかったら「うつ」になっていたかもしれません。今日もこの法廷に、一緒にがんばっている仲間たちが来てくれています。

生活保護利用者のくらしは、とても苦しく辛いものです。世間から理解されず、差別を感じることが多々あります。だから、裁判の原告となることにはためらいがありました。何回も躊躇しました。ここに立っている今もかなり勇気を出しています。

でも私が原告になる決意をしたのは、「何回県に審査請求しても、国に再審査請求しても聞く耳をもってもらえていない」と感じたからです。「このままではだめだ」と思い裁判を決意しました。

そして、「老齢加算を元に戻してほしい」と闘った「生存権裁判」が敗訴したことも決意したひとつの理由です。9年間がんばってくれた「元原告」たちの思いを引き継ぎたい。どんどん進む「切り下げ」に対してだまっていられない。「歯止めにしたい」という思いです。

弱いものいじめをしながら、「おまえたちは黙ってろ!」というのはおかしいと思います。基準引き下げは、年齢に関係なくすべての生活保護利用者が対象です。私のまわりには、「何を言ってもどうにもならない」と諦めてしまっている人たちがたくさんいますが、全国で900人以上の人たちが声をあげているのです。

もし、裁判に勝って、基準が元に戻り、さらに「健康で文化的な最低限度の生活」がおくれるくらいに基準があがったら、私はバーベキューやピクニックなどで、堂々と仲間たちと交流がしたいと思っています。 裁判所は人間らしい温かみのある目でしっかりと私たちの生活を見て、私たちの声に真剣に耳を傾けて下さい。

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