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記録的な酷暑の中、厚労省に緊急要望をしました

2018.08.01

記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。

異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、厚生労働省に緊急要望をしました。


※要点を1枚にわかりやすくまとめたチラシを作成しました。ご活用ください! PDFのダウンロードはこちらから

「要望書」印刷版(PDF) のダウンロードはこちらから

※弁護士ドットコムで報道されました。https://www.bengo4.com/internet/n_8283/


2018年7月26日

厚生労働大臣 加藤勝信 殿

いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護問題対策全国会議

厚労省通知の改善・周知と夏季加算創設等を
求める緊急要望書

第1 要望の趣旨
記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、以下の諸点を緊急に要望します。

  • 生活保護利用者にエアコン購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認める厚労省通知に関し、実施機関の柔軟な運用が可能であり必要であることを含め、改めて周知徹底してください。
  • 上記通知について、本年3月以前に保護開始された者も対象とするよう改正してください。
  • 実施要領局長通知第7-2(2)アの「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能であることを周知してください。
  • 生活保護利用者が電気代を心配せずエアコンを使えるように、この間引き下げられ続けている生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算を元に戻し、夏季加算を創設してください。

第2 要望の理由

1 エアコン購入費等の支給を認める本件厚労省通知の内容
厚生労働省は、近年、熱中症による健康被害が数多く報告されていることを踏まえ、本年6月27日に発表した社会・援護局長、保護課長通知で保護の実施要領を改正し、一定の条件を満たす場合にエアコン等の冷房器具購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認めることとしました(以下、「本件厚労省通知」といいます。)。

通知の内容は以下のとおりです。

(1)エアコン購入費等が認められる場合
以下の5つのいずれかに該当し、かつ、世帯内に「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる場合

  • (ア)2018年4月1日以降に保護開始された人でエアコン等の持ち合わせがない
  • (イ)単身者で長期入院・入所後の退院・退所時にエアコン等の持ち合わせがない
  • (ウ)災害にあい、災害救助法の支援ではエアコン等をまかなえない
  • (エ)転居の場合で、新旧住居の設備の相異により、新たにエアコン等を補填しなければならない
  • (オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受けて転居する場合にエアコン等の持ち合わせがない

(2)「熱中症予防が特に必要とされる者」(局長通知第7の2の(6)のウ)の解釈
課長通知問100は、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。」としています。

2 本件厚労省通知の評価

(1)周知がまったく不十分である
酷暑にあたり冷房器具購入費等の支給を認める本件厚労省通知が発出されたこと自体は評価できます。しかし、私たちの知る範囲でも、本件厚労省通知の内容を知らないケースワーカーも多く、福祉事務所の現場への周知はまったく進んでいません。通知の対象となり得る生活保護利用者にきちんと情報が届くよう、周知を徹底する必要があります。

(2)実施機関の柔軟な運用が可能であり、必要であることを周知すべき
また、「熱中症予防が特に必要とされる者」について、例示されている高齢者、障害者、小児、難病患者だけでなく、「被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とした点も、地域や世帯の実情を踏まえた柔軟な解釈の余地を実施機関に与えたものと理解できます。
しかし、実施機関によっては、上記の例示の場合に限定した厳格な運用を行うことも想定されます。近年、日本全国において記録的猛暑が続き、健康な者でも熱中症を発症するリスクが高い以上、できる限り柔軟な運用が求められていることを重ねて周知することが必要です。

(3)本年3月以前に保護を開始された人も対象にすべき
一方、本件厚労省通知(ア)が本年3月より前に保護を開始された人を除外している点は問題です。その理由について、厚労省は、「日常生活に必要な生活用品については、保護受給中の場合、経常的最低生活費のやり繰りにより賄うこと」としていると説明しています。
しかし、この間国は、2013年から生活扶助基準を平均6.5%最大10%引き下げ(年670億円)、期末一時扶助を引き下げ(年70億円)、2015年から住宅扶助基準(年190億円)と冬季加算(年30億円)も大幅に引き下げてきました。この相次ぐ基準の引き下げで、もともと「最低生活費」である保護費を節約して数万円単位の貯蓄をすることはほとんど不可能となっています。
したがって、本年3月より前に保護を開始されたとしても、現に貯蓄のない人については、同様にエアコン購入費等の支給を認めるよう本件通知は改善されるべきです。

3 「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給が可能であることも周知すべき
本件厚労省通知によって、エアコンは最低生活維持のために必要とされる家具什器であることが明確になりました。
したがって、エアコン等の修理費は、「被保護者が現に居住する家屋の…従属物の修理…のために経費を要する場合」の「住宅維持費」に該当するものとして、当然支給することができるはずです(実施要領局長通知第7-4(4)ア)。
本件厚労省通知の改めての周知に際しては、この点についても併せて周知すべきです。

4 生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算の復活と夏季加算の創設
先に述べたとおり、この間のあいつく生活保護基準の引き下げのため、生活保護利用者の多くは、エアコンが自宅にあったとしても、電気代を節約するためにほとんど使わないようにしています。これでは、せっかくエアコンを設置したとしても熱中症対策にはならず「宝の持ち腐れ」です。
悲劇が起きる前に、国は、一連の生活保護基準引き下げを撤回して元に戻し、夏季加算を創設すべきです。

以 上

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