フル活用しました。「消費者物価指数に関するルールを踏みにじったから、そうできた」というポイントが重要です。
厚労省は2008年~2010年の生活扶助相当CPIの計算は、実質的にはパーシェ方式と同じである厚労省の独自方式で行いました。
2010年~2011年については、総務省統計局のラスパイレス方式で計算しました。物価指数変化率の計算については「測定」という言葉がよく使われます。厚労省は2008年~2010年の期間と2010年~2011年の期間を別々の方式で測定しました。
ラスパイレス方式の計算値とパーシェ方式の計算値が一致する現象は、現実にはほぼ起きません。厚労省のやったことは、目盛りのずれた2つのモノサシを用意して異なる部分の長さを測定したようなものです。あまりにも異常であり、生活扶助基準をめぐる全国各地の裁判でも原告側が厳しく追及しています。
もうひとつ、重要なポイントがあります。生活扶助費の改定額を決めるときにだけ、実質的なパーシェ方式で計算してしまったことです。
日本では、消費者物価指数の計算には普段はパーシェ方式を一切使っていません。ただし、2011年になると、2010年を比較年にしたパーシェ方式で、2005年~2010年、2006年~2010年、2007年~2010年、2008年~2010年、2009年~2010年の消費者物価指数変化率が計算できるようになります。
しかし、そうした計算は「パーシェ・チェック」以外では行われていません。総務省統計局が通常のラスパイレス方式で計算してきたのとは異次元の「第二消費者物価指数」が出現してしまうからです。
CPI総合指数と生活扶助相当CPIについて、2006年~2010年、2007年~2010年、2008年~2010年、2009年~2010年の変化率を統計局方式と厚労省方式の両方で計算してグラフにまとめたのが次の図です。
総合指数でも生活扶助相当CPIでも、厚労省の方式だと統計局の方式に比べて下落率が格段に大きくなるのです。
その原因はデジタル家電をめぐる特殊事情です。生活保護利用者だけを標的に特殊事情をフル活用するのは罪深いことだと思います。