政府は2013年8月から段階的に生活扶助費を削減しました。生活扶助費は、生活保護制度の中で日常生活費として支給されます。
この削減案を同年1月に公表したのが厚生労働省。生活扶助費を改定する理由として示したのは「ゆがみ調整」と「デフレ調整」です。
生活保護世帯は住んでいる地域や世帯人員の年齢などで区分され、それぞれの区分によって、支給される生活扶助費の金額が違います。
厚労省は、それぞれの区分ごとに貧しい一般世帯の支出額と比較し、生活扶助費の支給額が多すぎるとか、少なすぎるとか、計算しました。
そして、多すぎるところは生活扶助費を減らし、少なすぎるところは生活扶助費を増やす、という調整作業をしました。これが「ゆがみ調整です」。
デフレ調整は、公的年金の物価スライドのようなものです。物価の変動率に合わせて、生活扶助費の金額を変える考え方です。
分かりやすいモデルを考えてみました。生活保護利用者が生活扶助費を昨年度は年間100万円もらって年間100万円の買い物をしたとします。そして、本年度もまったく同じ品目を同じ数量だけ買うとします。この品目群の物価が2%下がったら、どうなりますか。簡単ですね。
この人は前の年に買った品目群を98万円で買えます。本年度も生活扶助費を100万円もらうとしたら、生活扶助費が2万円余ります。「それなら、物価の2%下落に合わせて、生活扶助費を2%削って98万円にしよう」。これが、物価下落率に連動させた生活扶助費のデフレ調整の考え方です。
物価下落率が過大になるように操作されたら生活保護利用者は大変です。例えば、このケースで物価が5%下がったことに偽装されたら、生活扶助費は年95万円しか支給されず、生活費を3万円余分に切り詰めねばなりません。
現実に厚労省が2013年に「物価偽装」を実行して糾弾されているのです。偽装によって余分に削られた生活扶助費の金額は年間300億円~500億円程度と推測されています。酷い「詐欺行政」と言えます。
このときの厚労省のゆがみ調整にも重大な問題がありました。「ゆがみ調整偽装」と「物価偽装」がなされたゆがみ調整とデフレ調整で、厚労省は年間670億円(国の予算ベース)もの生活扶助費を削減しました。670億円のうち580億円がデフレ調整分です。